授業紹介

Vol.3 タイフィールドスタディー
「東南アジア論実習」
現地でしか見えないものに触れる

タイトルイメージ画像

タイの大洪水のニュースからわかること

2011年、タイは大洪水に見舞われました。このニュースは、テレビや新聞で繰り返し報道されましたので、みなさんもご記憶のことと思います。ではなぜ、タイの洪水が日本でこれほど注目されたのでしょう。

それは、洪水によって古都アユタヤや首都バンコク郊外に点在する工業団地が水没し、多くの工場が操業停止に追い込まれることによって、部品の提供が滞り、日本の自動車や電気製品の生産が大きな影響を受けたからにほかなりません。

かつて東南アジアの農業国というイメージが強かったタイは、1980年代後半以降、日系企業の進出などによって、急激な工業化が進み、いまや世界の工業生産の拠点のひとつとなっているのです。

タイの様子

現地でしか見えないもの

「東南アジア論実習」は、こうした工業化・都市化によって、大きく変容しつつあるタイをおもな対象として、企業や行政を含む地域社会の実態調査を行なう授業です。

授業の様子

タイの何を知りたいのか―調査テーマは、受講生の関心にもとづいて決めます。受講生はまず文献や資料を収集し、テーマに関する基本的な情報を把握してもらいます。その上で、具体的な調査計画を立案し、実際にタイでの調査を行います。タイ語でのやりとりができることが理想ですが、そうでない場合は、担当教員が通訳をします。調査のまとめとして報告書を作成します。ちなみに最近の報告書のタイトルを掲げておきましょう。

  • 2007年「タイ・チェンマイにおける一村一品運動(OTOP)と地域社会」
  • 2008年「地域社会と住民自治―タイと日本の比較を中心に」
  • 2009年「タイ東北地方における教育の現状と課題―シーサケット県教育ゾーン3を事例に」
  • 2010年「チェンマイ市における都市問題と地域社会―住宅問題と育児支援を中心に」
  • 2011年「タイ・チェンマイにおける貧困と支援の課題―子どもと山地民を中心に」

現地調査の実施をめぐっては、テーマの設定、先行研究の検討、調査の設計、アポ取り、渡航、インタビューの実施、一次資料の収集、結果の整理と分析、レポート執筆、報告書の作成という一連の作業があり、受講生にとって、相当ハードな負担となります。しかし、それだけに得られるものもまた大きいといえましょう。

授業の様子

現地の空気を呼吸し、現地の人の生の声を聞くことによってしか、見えないことがあります。外国を知るというのはそういう作業の積み重ねです。そして、外国を知ることは日本を知ることでもあるということに、一人でも多くの学生に気づいてもらいたいと思っています。